【本】羽生世代の衝撃
昨日からずっと、仕事から逃避するため、この本↓を読んでいた。
いい企画ってあるもんだな。
これは、著者が昔やってた「対局日誌」という連載から、羽生世代に関する文章だけ抜き出して一冊にしたもの。
元は1986~1992年に、その当時の対局について書いていた連載だ。
著者は、当時は現役の棋士。
アマチュアには、プロ棋士の才能を指し手から語るのは難しいけど、そういうことを大胆に語れる点が強み。
才能、センスみたいなことがメインテーマ。
ほー、そういうもんかと思って読んでたわけだ。
羽生のデビュー戦から始まって、羽生、森内、佐藤、村山、郷田、屋敷、丸山など、そのころ続々と登場してきた恐ろしく強い少年たちの話になっている。
当時、彼らがいかに強くて、どれほど輝きに満ちていて、旧世代にとってどれほど恐ろしい存在だったか、これを読むとよくわかる。
じつは、この本の元になったやつを昔読んでいる。
その当時にも単行本になってて、それを4冊とかだったかな、読んだ記憶がある。
だから、ほんの少しは覚えてる内容もあったけど、ほとんどは新鮮に読めた。
そのままだったら、今となっては古臭いと感じただろうけど、羽生世代に絞って抜き出したことで、古臭いとは全然思わなかったな。
ここらへんが企画の勝利。
ただね、若い人が読んだときには、戦型も古いし、おもしろいと思うのかはわからん。
著者は、伝統主義者っぽいところがある。
少し引用してみよう。
* * *
かりに佐藤が挑戦者になったとしよう。
10代のタイトル戦挑戦者は史上初である。
そして、あの羽生少年を追い抜いた者が出たことになる。
なんとも恐ろしい時代ではないか。
鈴木政男さんがこう書いている。
「昨今将棋界では十代、二十代棋士の活躍が話題になっているが、かれらがどんなに強くとも、ただ強いだけでは将棋の感銘度はしれている。
というのは、勝負に対局者の人生・その全人間的内容が加わったとき、人は(私は)初めて感動するのであって、かれらの年齢では人を感動させるほどの将棋人生と人生経験にはほど遠い」(将棋ペン倶楽部夏号)
おっしゃる通りであろう。
しかし現実は好むと好まざるにかかわらず、10代棋士のタイトル戦登場は必至なのである。
今年はなくとも、来年、再来年には続々登場するだろう。
問題は、そのとき、10代棋士の棋譜に、升田~大山戦や中原~米長戦とはちがった魅力が見い出せるかどうかである。
もしそれが、人の生きざまが表れていないが故につまらないとすれば、プロ将棋は多くのファンを失うことになる。
将来やいかに。
試されるときが来ているのである。
* * *
おもしろいよね。
今の50代より上の人に多いのかな、スポーツなどに関して、同じような意見を聞くような気がする。
麻雀に関しては、今のプロ連盟のメンゼン主義者が言いそうな内容でもある。
そして将棋では、それから20年経って今では人間がコンピュータに負ける時代だもんな。
よりシビアな問題になっている。
個人的な意見としては、傍観者的だなーって思うわ。
当事者にとって、少なくとも俺にとっては、どうすれば勝てるのかしか関係ねー。
プレイヤーがガチだったら、そこにはかならずドラマが生まれてくると思うし。
世の中は移り変わっていくし、価値観も変わっていく。
ファンにも新世代が参入してくる。
たとえばオリンピック。
スポーツなんて若くなきゃ無理だし、まずは技の勝負だ。
人生をかけた勝負を見たいというのは、「人生」って言葉が広く深い意味を持ちえた時代の発想だなって思う。
とはいっても、著者を批判したいわけじゃない。
俺よりずっと上の世代だし、20年以上も前に書かれた文章を、今の観点から真顔で批判するのは愚かしい行為だ。
素材として、おもしろいなーと。
羽生―大山戦がこの本の白眉だと著者は書いている。
巨匠に対して、天才少年は、生涯でも何本かの指に入る妙手を見せたと。
そう、これは少し覚えてた。
あと、羽生―剱持戦がおもしろい。
勝ちまくる天才少年に対して、財テクばっかやってる老人が、この日に限っては完璧な差し回しを見せて、老獪に勝ちきったって話。
ロートルの意地。
数字は出せなくても、技は決してなめられないベテラン勢。
こういう業師には痺れる。
ここらへんの感覚は、俺も老害っぽいのかね( ̄w ̄)プッ
まぁなんにせよ、おもしろかった。
誤植を3つ見つけて、将棋の本も大変だなって同業者的に思った。
6八同金が8八同金になってるのがあって、こういうのは見つけきれないと思うけど、ひらがなの間違いは潰せてないとヤバイんじゃねーの?( ̄w ̄)プッ
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コメント
福地さんならこういう本の麻雀版を描けるだろう
読みたい
投稿: | 2014年11月27日 (木) 16時48分
羽生世代が老害になったら嫌だな
投稿: | 2014年11月27日 (木) 17時01分
↑麻雀界とは違って、本当に超えなくちゃ行けない高く厚い壁であるから大丈夫だと思うが
投稿: | 2014年11月27日 (木) 17時18分
まさか河口さんの対局日誌読んでるなんてビックリ 麻雀の観戦記とかはなんであんなにつまらないんでしょうかねw
投稿: ユニシロ | 2014年11月27日 (木) 17時52分
羽生の下の世代も凄いけどね
若手の研究が凄いということ
だから将棋の世界は日進月歩で変化してるんだろう
イメージだけの棋士はもう通用しない
若手の序盤の研究量、羽生世代の中終盤の妙手は共に興行としての価値がある
投稿: | 2014年11月27日 (木) 17時53分
麻雀と将棋の一番の違いは、過去の強豪の方々の
本はきっちりとした理屈なり裏付けがあって新しい
研究や成果があっても継続的に資料に使えることですね。
古い本がゴミでなく、資料として以降も使えるのは大きい
です。
投稿: 自爆王 | 2014年11月27日 (木) 21時13分
「新・対局日誌」全8巻ですね。僕が将棋に興味を持った時には既に絶版で、神保町で全巻揃えました。確かに羽生×大山戦の描写は凄いですね。手順の解説だけでなく、「対局室の様子」の描写が効いてるんだと思います。
麻雀でも同様の観戦記は成立しないですかね。因縁決着戦、で森山×小島×堀内×瀬戸熊戦でもニコニコに企画してもらって、福地さんが手筋に加えて対局室の様子も描写する。ぜひ読みたいです。
投稿: あれっくす | 2014年11月27日 (木) 21時32分
ながい
読む気がしない
麻雀界と将棋のプロ世界は、根本的にちがうでしょう
将棋プロの世界は、昔から、言わばデジタル、論理的だった
だから、過去の書物や過去のプロも、参考文献になった
麻雀プロの世界は、
さいきん、ようやくマトモになった状態(デジタル化)
それまでのオカルト麻雀の時代は、
馬鹿が馬鹿同士で、気持ち悪い、スーパーアホアホドンジャラしていただけ
連盟とか雀鬼流とかが流行していた、アホな時代は、
流れが~~~、ツキが~~~、とか、馬鹿で幼稚でアホなだけの、なんの参考にもならないゴミプロの時代
いわゆる暗黒期
麻雀プロ業界は、まず、
流れが~~~~ツキが~~~、とか言いだす、カスオカルトプロ達を、市場から根絶して、ようやく正常化する
簡単に言えば、
連盟プロとかは、麻雀業界にとって「お荷物」や「借金」でしかないのだ
投稿: 天鳳位・赤犬さん | 2014年11月27日 (木) 21時48分
赤犬に触れるやつは赤犬に準ずるレベルのバカ
投稿: | 2014年11月27日 (木) 22時07分
昔連盟が、将棋世界という将棋専門誌にあるイメージと読みの将棋感をパクり、イメージと読みの麻雀感なる本を出していた。
将棋の方は、定跡に対して、それぞれの棋士なら、この局面こう指す方針だから云々という至極ロジカルなお話だったのに対して、
連盟の本は、根拠のない、ただのそれぞれの感覚を語るだけ。はっきり言ってダサかった。なんというか、賢いように見せたい、将棋などの世間にある程度認知されているゲームに対する劣等感が満載で。
そういう意味ではネマタ本を始めとする各種福地本には、知性を感じるから、麻雀って実は知的ゲームなんだぜってアピールになってるんじゃないかな。
俺が何を言いたいかというと、ネマタ本の表紙どうにかならなかったんかい?っつーこと。
投稿: | 2014年11月27日 (木) 22時11分
あれだけおちゃらけて中身はまじめです
という戦術もあるとおもいます!(キリっ)
投稿: にせ天津木村 | 2014年11月27日 (木) 22時20分
プロ麻雀連盟のリーグ戦(鳳凰戦)のシステムって、将棋の名人戦リーグをかなり参考にしてる(パクってる)よな
投稿: (´・ω・`) | 2014年11月27日 (木) 22時28分
仕事しなさいよ
投稿: | 2014年11月27日 (木) 23時18分
連盟には、まず、鳳凰って単語を使わないでほしいよね
天鳳の鳳凰卓とカブって紛らわしい
連盟は、上卓民レベルのよわいプロしかいないんだから、
鳳凰の名をかたることじたいが、いわば、適正ではない
連盟プロたちは、
実力のとおり、もっと貧弱でよわそうな名前にしてほしい
雀鬼流の開祖も、「鬼」、というほど全然つよくないから、
「雀コメツキバッタ」とか、「雀ミミズ」とか、そういう、弱そうな名前に変更してほしい
麻雀じたいが、勘違いされちゃうよ、
あんな弱いザコに、鬼とか、強そうな名前じゃ
投稿: 天鳳位・赤犬さん | 2014年11月27日 (木) 23時19分
著者の河口七段は今話題の財テク元プロ棋士・桐谷との
盤外壮絶バトルが無茶苦茶面白かった。
投稿: | 2014年11月27日 (木) 23時26分
羽生はとにかく開拓者精神が凄い。森内との王将戦でみせた相振とかは、その象徴。丸山みたいに、何十年も同じ戦法しか差さない棋士より、はるかに魅力がある。
開拓者精神という点では、福地先生も羽生と通じる「人を引き付ける力」がある。まぁ、素行は真逆っぽいけどね…
投稿: | 2014年11月28日 (金) 01時47分
>著者の河口七段は今話題の財テク元プロ棋士・桐谷との盤外壮絶バトル
それ知らないわw
知りたい~!
教えて!
投稿: 福地 | 2014年11月30日 (日) 08時57分
コメツキバッタ。凄い例えですね。
投稿: 雀奇流の開祖 | 2014年12月 1日 (月) 02時02分
「将棋マガジン」の、河口俊彦七段による「対局日誌」では、桐谷七段は常連のごとく登場していた。しかしある号で桐谷七段のポカを紹介したところ、桐谷七段が激怒。同誌に反論文を載せたこともあった。
田丸昇九段ブログより
投稿: | 2014年12月 1日 (月) 15時01分