『東大を出たけれど』というコラム集が出た。
いやー、本になるとはもう思ってなかったわ。
驚きだ。
これはね、以前にも書いたけど、
最初は2ちゃんねるへの書き込み
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俺が雀賢荘メルマガにスカウト
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雑誌「近代麻雀」に引き抜かれコラムに
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意外にも、人気が出た
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意外にも、漫画化された
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意外にも、漫画の単行本が出た
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意外にも、漫画の単行本が3巻まで出た
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意外にも、Vシネマにもなった
という、俺の長い業界ウォッチングの中で、他に類を見ないラッキーな展開をたどってきた。
だが、本人が一番望んでいた文章のコラム自体の書籍化は実現しなかった。
これは不思議だった。
漫画化されて上手くいくとか、漫画の単行本が売れるとは思わなかったが、文字の本になって、そこそこ売れるだろうとは、俺の業界人アンテナがビシビシと感じていたから。
俺自身、知ってる編集者に紹介したり打診してみたりとか、何度かしたことがある。
それなりに売れるだろうという判断に自信を持っていたから、俺が個人で出資して、そのぶんリターンを得られるシステムがあったなら、自分の金で出してもいいとすら思っていた。
むかし大魚を逸した経験を持ってるから。
凸のHPを初めて見たとき、これは本にしたら絶対に売れると確信してたのに、当時の竹書房は雀鬼会の時代で、これが売れると説得できる気がしなかった。
他社は考えもしなかった。
その2年後くらいに講談社で『科学する麻雀』として書籍化され、ベストセラーになった。
俺が作ってたらもっといい本にできたのにと思う。
数式とか表とかグラフって、新書というフォーマットには向いてないからね。
内容の整理ももうひとつで読みにくすぎる。
(ただし、販売面は講談社のほうが絶対に上なので、今みたいなロングセラーにはなってなかったかもしれん)。
そんなたられば話はいいとして、『東大を出たけれど』だ。
なぜ書籍化が実現しないのか、以前は不思議でならなかったけど、2~3年前からその理由が理解できるようになった。
あれは、ならないべくしてならなかったんだと。
書籍化したいというダースーに、あーしたらいい、こーしたらいいと、勝手なアドバイスをしたことが何回かあるんだが、常にこっちのいいたいことが伝わらないモヤモヤがすごく残った。
それは何か。
自営業センスのなさだ。
彼はいずれ娘が大きくなったらこの本を読ませたいと何度も言っていた。
よーするに、個人の思い出作りだよね。
出版社は商売だから、そんな著者はいらないんだよ。
必要とされる著者ってのは、なんとしても売れる本を書いてガバチョと儲けてやる!とギラギラしてる人だけ。
かならずしも金儲けじゃなくてもいい。
小説家は、書くしかないという心の病気みたいなもんが推進力のことが多い。
なんにせよ、なんとしても本の世界に自分の居場所を作ってやるというがむしゃらさ。
そーいうもんがない著者はいらない、出版社としては。
凸みたいに学生時代に書いた本が売れまくるのは天才のみ。
小説家とか漫画家だったら天才探しだけど、ライターは気合だ。
気合がない人間は、ふつー程度しか努力しないからね。
ダースーには、自営センスが根本的にない。
今回この本が出ても、「自分で勝手に売っていいんですか?」みたいな、甘ちゃんなことを言ってるくらい。
金を出してそれを回収するという商売のシステムが、彼の頭の中にはまるでない。
性格的に向いてないのかもしれないし、あるいは、自由業の道を選んでしまっている現在になっても、リーマンになる道と麻雀の世界で生きていく道の分かれるポイントで、心は立ち止まっているのかもしれない。
俺もね、両親とも教師で、教員か研究者になれ的な育てられ方をしたから、自営業的な発想が全然できなかった。
ただ、それしか生きる道はないと思ってたから、自分の意識を作り変えてきた。
そんな俺からすると、いつまでも童貞を捨てないなって感じがする。
麻雀プロは甘ぇわ。
肩書きは麻雀プロで、本業はフリー雀荘勤務で全然構わないんだが、副業として文筆業をやって、その世界でものし上ってやる!という気合はゼロだ。
たぶん技術的な努力はものすごくしてると思うんだが。
努力はするけど、売り込みみたいなことは発想からして無理だという社畜的な姿勢なんだよね。
あとね、これは漫画になりVシネマにもなったわけだから、コンテンツとしてちゃんと消費されている。
映画やドラマで、あとから原作本が出されるって、すごいヒット作だけでしょ。
それほどじゃない。
つーわけで、書籍化されなかった理由を完全に納得してたのに、なぜか今になって書籍化される運びに。
出版社や個人編集者にはノルマってのがあって、古いコンテンツがいきなり復活したりするんだよな。
いやはや、どんだけツイてやがるんだ……。
売れそうかって予想は、中くらいの感じ。
以前は売れるだろうと思ってたけど、今はそれほどには思わない。
あらためて読んだ感想としては、叙情が抑制的すぎる。
開き直りが足りない感じ。
俺の感覚としては、文章よりも漫画版のほうが読後感が残る。
ただねえ、彼に関しては、過去にこれだけ予想を外しまくってくると、さすがにわからんなぁという気もする。
てなわけで発売中ですね。
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