【つぶ】心は通じるか
俺の父親というのは、他人は自分とは違うってことが理解できない人だった。
食い物の話を例に取ろう。
俺はガキのころから、味の濃いおかずで白い米をワッシャワッシャと食うのが好きだった。
父親は真逆。
父は白い米があまり好きじゃないのだった。
なので、「赤飯を買ってきたぞ」「○○パン買ってきたぞ」と、おすすめされる。
俺はそうじゃないと何百回言っても、翌日になったら「山菜おこわ買ってきたぞ」が繰り返される。
俺はコロッケにソースとかしょうゆをドボドボかけて、炊き立ての白い米をワッシャワッシャと食うのが好きだというのに。
そういうのは微妙に相手を傷つける。
「○○買ってきたぞ」はサービス精神の発揮であり、愛情ではあるのだが、そこに、相手の中身には興味ないというメッセージも含まれているわけだ。
食い物の話だったらいーよ。
俺が中高生のころの進路に関しても、「~~なタイプだから、~~みたいなのがいいんじゃないか」と、俺自身の適性とは関係ない話を刷り込まれた。
教師だった父の「進路指導の神様」という肩書きによって。
それは父親の自分のパターンの話にすぎなかった。
それが自分の息子だったら自分と同じに違いないという無邪気な確信だったのか、他の人に対しても同じだったのか、よくわからん。
明らかに無責任な発言だったら気楽に受け流せるけど、そこに愛情とか心配も含まれていて本気で言っている。
けれども、それは的外れというよりも、まったく無思考な発言にすぎなかった。
愛情はある、けれども愛情はない。
そういうメッセージはダブルバインドといって、子どもの心を壊しやすい。
そんなふうに理性的に見られるようになったのは、大学生以降のことだった。
ちょっと前にアスペルガーの本を読み、自分にもけっこう当てはまると同時に、それ以上に、父親にも当てはまることを発見。
あれは脳の傾向だったんだな、だったらしょーがねーかと思えるようになった。
それまでは、いつも嫌な気分になっていた。
そんな生い立ちと関係あるのかないのか、俺は他人が自分と同じとは気楽には思わない。
自分の主観を他人に伝えることに禁欲的。
どーせ他人は違うんだろって思ってる。
俺は気持ちが伝わるってことに懐疑的。
日本人としてはね。
世界水準で見たら、やはり気持ちは伝わる派なんだと思うけど。
つーわけで、自分でいいと思っても、それが売れるなんて容易には思わない俺からすると、ゲンマ書籍化みたいな話で、「それはどういう層が買うのかな? そういう層はなんちゃら」みたいな意見って、80%くらいは「それは他人の話のふりしたあんたの主観でしょ」としか思わない。
そんなことは俺のほうが100倍考えてるから。
むしろね、自分では、もうちょい無邪気に自分の主観を信頼していいんじゃないかと思ってるくらい。
なんかね、どうしても主観を爆発させることが嫌いなんだわ。
極論を言うならば、誰しも自分の主観からしかモノを見られず、他人のことなんて想像できない。
結局、最後に信頼できるのは、データなんかじゃなくて、自分の主観だ。
理屈より直感のほうが当たるから。
それはわかってるんだけどね。
心は通じる。
けれども通じない。
これは永遠の課題なのかもしれないね。
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コメント
チャンラ~ン♪
あたしゃ難しいことは、よく分かりませんが
福地さん、今日はやけに更新しますね?
ま…まさか、原稿が進まなくて現実逃避してるんじゃないですよね?
(|| ゜Д゜)
投稿: カレー | 2013年10月 8日 (火) 21時42分
ゲンマ書籍化なんて無駄なことイヤイヤやってるの丸見えだわw
売れる要素皆無だもんなwwwwww
投稿: | 2013年10月 8日 (火) 21時44分
たまにこういうことまで書いちゃう福地センセーが好き。
投稿: | 2013年10月 8日 (火) 21時45分
あー、分かりすぎるわ。
俺の親父もそうだわ。トマトは食えないって子供のころから言い続けてるのに、いまだに「サンドイッチ買ってきたぞ」っていってトトマトが入ってるサンドイッチ渡されるわ。
アスぺと自己愛性人格障害を親に持つ子どもは不幸になるわ。
投稿: | 2013年10月 8日 (火) 22時43分
センセのブログはこういう記事が一番好み
クソガキには勉強になりますわ
投稿: ラヴァー | 2013年10月 9日 (水) 00時17分
センセの気持ちスゲー分かるわ…ウチは親父とお袋がダブルで「その」タイプだったから家族で食事の時間が苦痛で給食とか学食が嬉しくてしょうが無かったワ
偏食はしないけどゴチャゴチャしたメシは嫌いといくら訴えてもそゆのばっかでゲンナリした記憶があるし…
嗜好の強要とか子供をペット化すんなよ…とか(遠い目
投稿: | 2013年10月 9日 (水) 20時51分
うお、途中で読むの止めたけど、なんかすげーブーメラン書いてるなーって思った。
確かに他人になんて、自分の考えてることの10分の1も伝わらないものだけど、だからといってきちんと伝える努力を放棄することの言い訳にはならないと思うけど…。
むしろ、そういう努力をしなくなった人間から、他人を類型でしか見れないようになっていくんじゃないかと。
ま、でも、たしかに日々、いわゆる「バカの壁」―バカの壁を読んだことないのに引用しちゃうけどw、ようするに思想の壁のことだよね?―は実感するから、あんまとやかく言う気もないけどねー。
それに、バカ丁寧に言葉を並べるよりも、ハッタリ一発かました方が、よっぽど上手に伝わることも多いし、ま、難しいもんで…って、なんかオチが変な方向いっちゃたっけど、せっかく書いたからこのまま投稿しとく。
投稿: | 2013年10月11日 (金) 06時07分
福地さん あんたやるね
投稿: | 2013年10月13日 (日) 22時01分