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2013年6月12日 (水)

【本】運と実力の間

東大を10年かかって卒業し、在学中からポーカーの稼ぎで生活してて、この前、世界チャンピオンになった木原直哉さんという人がいる。
公式サイトを見ると、かなりマスメディアに登場してるみたいね。
その人の初の著書が出て、それを読んだ。

俺はポーカーのことはほとんど知らないんだが、どういうゲームなのかわかると同時に、面白かったな。
ポーカーの人の本を読んだというよりも、デジタル派の麻雀打ちの本を読んだような感覚。
イマドキの麻雀プロを頭良くしたような感じ。

麻雀とポーカーはすごく似てる。
小倉はよくそう言うし、木原さんもそう書いている。
いろんな手の成功確率を記憶しておいて、そのつど、期待値的にプラスなら勝負するし、マイナスならオリる。
それを繰り返すゲームだという点で。

そういうシンプルな考え方が貫かれている。

俺自身の麻雀観としては、そこまで単純化させてなくて、6~7割は同じなんだが、3~4割は個別対応とか展開を意識してる感じがする。
ただ、俺の場合は6~7割の共通する部分でも、判断を正確にしていこうというよりも、メンタル要因からくる事故を、できるだけ減らしていこうという部分に力点がある。
俺のほうが年寄りっぽいな( ̄w ̄)プッ

この本で信頼できるのは、自分に対しても冷静に見ているところ。
同じテーブルに5人いるとして、A級プロ3名、B級プロ1名(自分)、C級1人くらいのバランスなので、格下のほうの自分としては、運の比重が大きくなる戦略を取ろうと思った、などの記述がある。
自分の内側に映った世界の話ではなく、自分のことも外側から見ようとしてる意識があるので、信頼性が増している。

世界チャンピオンといっても、大きな大会の61あるサイドイベントの1つで1位になっただけだから、世界チャンピオンという呼ばれ方に疑問があったけれども、オリンピックだって何百もある競技の1つに優勝すると世界チャンピオンと呼ばれるから、いいかと思うようになった、という記述なども、自分をできるだけ客観的に見ようとしている意識の例。

なるほどなーと思ったのはネットの話。
ポーカーは、オンラインのほうがリアルよりもレベルが高いという。
その理由として、オンラインのほうが実戦量が30倍程度はかどるからだという。
著者はだいたい9窓して、9人分を同時にプレイする。
ポーカーはオリが多く、待ち時間が長いから、それでちょうどいいのだと。
ディーラーがカードを配る時間などもないから、ネットはリアルの30倍程度の実戦をこなせることになる。
すると、リアルで30年やってきたベテランよりも、ネットで1年間やってきた人のほうが、こなしてきた実戦量では上だったりする。

また、相手の手はわからないけど、自分の手のデータは取れるので、こういった手のときの勝率が低すぎるのはどうしてかなど、自分の傾向や弱点を見つけて補正していくことができる。

こうしてオンラインのほうがリアルよりレベル高くなり、練習の場としては欠かせないものになっていると。

30倍もの実戦量をこなせるのはポーカー特有の事情で、麻雀・囲碁・将棋の場合は、3倍程度だと思われるけど、やはりネットによってレベルが上がっている点は同じだろう。

ただ、リアルではネットにない要素があるので、その部分で傷のない人、高い適性を持ってる人は、リアル経験をほとんどせずとも、一気に強者への高速道路を駆け抜けていくのだ。

個人的にショックだったのは年齢の話。
20代、30代の人の登場が多い。
年齢が書かれてない人も多いから、ポーカープレイヤーのトップクラスが若者で占められているってわけでもなさそう。
ただ、スポーツほどじゃないにしても、テーブルゲームのベスト年齢は20~40歳くらいになるのが自然だと思われるので、俺個人としては、将来の厳しさを感じてしまった。
まあ、しょうがないわな。
体と心を鍛えるのみだわ。

あとね、これは出版人的な読み方だと思うけど、章タイトルや小見出しはかっこいいのに、本文はふつうに地味という箇所がいっぱいあった。
「人生で最悪のプレー」という小見出しがついてるのに、本文ではそれほどでもないとかね。
これって、読み物としてできるだけドラマチックにしたいと思いつつ、さらに、ポーカー好きな人にアピールするだけじゃなくて、ビジネス書として売りたいという編集者の思惑からきている部分で、それと実直な著者とのギャップが面白かった。
たぶん、出版社としてはウメハラ本勝ち続ける意志力 (小学館101新書)を理想として作ったんだろうね。

俺はそんなふうに、ポーカーの本としてじゃなく、イマドキのデジタル派ゲームプレイヤー一般の世界観の本として読んだ。
学ぶものあるなーという感じ。

さらに踏み込んで記述する続編に期待したいところだけど、ベガスやマカオを飛び回って転戦の日々だろうし、難しいだろうなあ。
一流のプレイヤーに、いい書き手でもあってほしいというのは、なかなか難しい要求だよね。

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コメント

カジノを転々としながらリアルポーカーのみで喰ってる日本人プレイヤーのブログを結構見てた時期があったのを思い出した
もう長いこと(たしか10年以上)潰れずに下の上くらいのレートで観光客相手にチビチビ稼ぐスタイル
しかしある時を境に若者が大勢カジノに来るようになってボロ負けしたんだとか
最初は「ガキ共がバカヅキなだけだ」と特に気にしてなかった様子だった
だが連日連敗で金銭的にどんどん追い込まれていった
おそらく肉体的にも精神的にも苦しかっただろう
実はその若者達はポーカーの専門学校で確率論等を徹底的に学んできたエリート達だった
上のレートの住人にはまったく歯が立たず結局ポーカーのポの字も知らないド素人の観光客相手に稼ぐ程度の腕前しかないんだから期待値通りにきっちり押し引きしてくる若者達に勝てないのは当然だった(鳳凰民に勝てない豆特みたいな感じか?)
そしてついに種銭が尽きて引退
一旦日本に帰国して種銭を作り直して復活して再挑戦してるみたいだけどスキルを向上させないとまたカモられるだけだと思う(ちなみに向こうではカモのことをフィッシュ=魚と呼ぶ)
麻雀と同じでどんどん進化していかないとあっという間に負け組になるんだなと感じた

投稿: | 2013年6月12日 (水) 17時28分

ナイスこめやな

投稿: | 2013年6月12日 (水) 18時14分

>俺自身の麻雀観としては、そこまで単純化させてなくて、6~7割は同じなんだが、3~4割は個別対応とか展開を意識してる感じがする。

そのポーカーの分析するソフトの話と絡むのだが、オンラインポーカーにももちろんレギュラーメンバーが居て、そういったプレイヤーのデータは集まりやすく、その相手のデータならば分析できる。
例えば全体の50%で相手が強気で来ているのにというデータがあるのに対して、本当に強い手が出来る確率は全体の30%だとすると、20%はブラフなので投資できる。
というようなプレイを出来るようになる。

>いろんな手の成功確率を記憶しておいて、そのつど、期待値的にプラスなら勝負するし、マイナスならオリる。

この文の中にもその考えが含まれてる。
つまりポーカープレイヤーも相手や場のカードや相手の持ち金状況なんかによってプレーを変えているってことですな。
それを考えると福地さんは真っ当な若手ポーカープレイヤーと似た思考してることになるんだろう。

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ひとつ新しい記事における麻雀の若者とベテラン、という話題においては、麻雀ではまだこういったソフトなどが普及していなく、ただ単に少し経験を多く積める人間でしかないために大きく変革が起こっていない様に思う。また、麻雀漬けの若者自体も昔と比べると多くは無いのでその母数的にも、経験的にもまだまだベテランが幅を利かせられる余地があるのだろう。

投稿: WW | 2013年6月12日 (水) 19時54分

この人昔ゆうゆうに来てたね、福地さんも面識あるんじゃないの?

投稿: | 2013年6月13日 (木) 09時27分

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