【本】『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』
「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た
2005 日経BP社 村上 宣寛
何年か前に少し話題になった本。今さらながらふと読んだ。
内容はこんな感じ。
・血液型の嘘
・バーナム効果
・ロールシャッハテストが滅びるまで
・矢田部ギルフォード性格検査(YG)とMGの嘘
・時代遅れの内田クレペリン
単純化してしまうなら、性格検査みたいなヤツの古臭いのは全部嘘っぱちだって話。
歴史的な解説がなかなか面白い。たとえば血液型はこんな感じ。
血液型の発見は20世紀初頭の大事件だった。それを性格と結びつけたのは日本の医者なんですな。論文は昭和2年。だが、調査してもバラバラの結果しか出ないし、まるで理屈になっていないため、昭和8年の学会でキッパリ否定された。
にも関わらず、これを一般向けに解説する本を出した能見某ってヤツがいた。この本が爆発的に売れたんだろうね。戦後になって、能見某の息子が4つの血液型をさらに4つずつに分類する本を出した。親子して血液型で食ってきた。
ちゃんと調査すると、血液型と性格との相関はまったく見つからず、卒論で扱おうとする学生などは困ってしまうのだが、それでも血液型には根強い人気があるのは、みなさんよくご存知の通り。その理由は「バーナム効果」ってものらしい。
バーナム効果とは、何か理由をつけて、誰にでも当てはまりそうな診断を下すと、人は信じちゃうというもの。誰にでも当てはまりそうな診断ってのは、こーゆーヤツ。
・あなたは人に好かれ、尊敬されたいという強い欲求があります。
・あなたは自分自身を批判する傾向があります。
・あなたの性格には弱いところがありますが、一般的に克服する能力があります。
・あなたは外面的には規律を保ち、自制しているが、内面的には不安で、くよくよしがちです。
こんなの誰しも身に覚えがあることだから、とくに気にしてるヤツに目をつけて「当たってる!」と思ってしまうのだという。毛髪による健康診断とか、科学風のやつをやると、知的水準の高い人たちでもコロッといってしまう。そして、あとで種明かしすると激怒する。やはり人間というものは、自分が見たいものしか見ないものらしい。すべての占いと心理テストは、このバーナム効果を基本にしているという。名前の元となったバーナムはアメリカの興行師で、「おめでたいやつはどんどん生まれてくる」という有名なセリフを残した。
ロールシャッハテストって、最近は聞かなくなった。それもそのはずで、あまりにも根拠が適当すぎるし、まったく当たらないため、世界的に批判が巻き起こって見向きもされなくなった。昔の京大教授やらの診断結果などがこの本に掲載されてるけど、たしかに男根表象ばかりの人とか、勝手な解釈を当てはめてるだけ。
矢田部ギルフォード性格検査とか内田クレペリンも古すぎて、どうしようもないと。
最後にSPIの話がチョロッと出てくる。就職試験に使われるSPIって学力テストだから、仕事能力との相関は低いに決まってると著者は一刀両断する。追跡調査すれば一発なのに、どこも発表せず、企業がずっと使ってるのは、金があまってるからでしょうなあと。最近は、人事用語で「コンピテンシー」という言葉が流行だが、要は「能力」で、これもたいして意味ないという。
まあSPIに関しては、足切りするために何か基準が必要だから使ってるってことでしょうなあ。
ぼくは血液型とか星座とか興味ないので、そーゆー話したい人は勝手にどうぞってスタンスだ。まあどうでもいい。
思うのは、みんな科学には興味ないんだなってこと。俺もそんなに興味ないけど、世間ではむしろ非科学に興味ある人が多い。こーゆー傾向を馬鹿にするのではなく、それはなぜかってところに問題があると思うけどどうだろう。科学に興味ないというよりも、科学を嫌いなんだよね。科学=権威であり、自分を抑圧するものだって認識があるんじゃないか。
日本の科学教育がやばいって叫ぶ理系研究者や企業人がいるけど、子どもよりも、大人の読む本や観るテレビ番組にこそ日本の科学教育の結果が示されているんじゃないのかね。
そして「心」を扱う難しさ。精神医学って、まだ100年ちょいしか歴史がない。最初はフロイトにしろ無茶苦茶ばっか言ってるわけで、古いものはお話にならない。それなら新しいものは信用できるのかっていうと、まだまだ発展途上だ。
だいたい気質とか性格って固定したもんじゃない。その人の置かれている状況によって変わってくる。揺らぎばかり。これだけ科学は発達したようでいて、人間についての探究はまだまだで、「心」や「能力」の測定は、今となっても難しい。
最近ではIQって言葉を聞かなくなった。これも意味ねーと判明してきちゃったから。
21世紀になって、ヨーロッパでは教育観が変わりつつあり、知識を詰め込むことから、発想する力、まとめる力、学習力などに移りつつある。知識はどんどん変わっちゃうから意味ねーと。teachからlearnへ。
これからの時代に必要な能力はコアコンピテンシーと呼ばれているが、それはどんな能力か、どうすればその能力を高められるかって部分はまだ手探りで、何もわかっていないに等しい。 こうして「能力」の定義自体が動いている以上、それを測定する方法が定まるわけがないよね。
てなわけで、人間はまだまだ難しい。この分野で成功すれば、簡単に食っていける。つっても、あやしいヤツがいっぱいいる世界で、なんちゃらコンサルとか、リクルートなんちゃらとか、まっとう風の顔してあやしいもんを売っているところが、一番儲けてるんじゃないのかね( ̄w ̄)プッ
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コメント
昨日の麻雀の結果はいかがでしたか?
投稿: ぽ | 2008年8月18日 (月) 08時26分
>ぽさん
3万7千ほど負けましたね~。
その甲斐あってか今日の天鳳は絶好調です(´д`)
投稿: 福地 | 2008年8月18日 (月) 09時47分
やっぱり科学ってインパクトが足りないんですよねー。
「エネルギーは保存されます。永久機関なんてできません」
みたいなのより
「エネルギーは保存されない!宇宙からの神秘のパワーで永遠の運動を!」
とかの方がずっと魅力的に見えます(笑)
科学が好きな人ってその科学の美しさとかに惹かれてるわけでその辺を一般人が理解するのは難しいんでしょう。きっと。
チラシの裏意見でごめんなさいw
投稿: 理系やってます | 2008年8月18日 (月) 12時56分
嫌いな人間がみんなAB型でした><
投稿: kyu | 2008年8月18日 (月) 12時57分
九州で水俣病が流行ったときに、有機水銀を流してたチッソは「水俣病の原因が有機水銀かどうか立証できない」っていう「科学的見解」で時間稼ぎを図ったわけで、「科学」はしばしばそんな風に利用されてきたし、その辺は今でも変わってないんじゃないすかね。そんなに信用のおけるもんだと思われてないと思います。
>思うのは、みんな科学には興味ないんだなってこと
科学技術って同じ専門でもアプローチが違うと何やってるか分からない場合があると思うのです。成果をあげてノルマを達成しないと予算が付かない、なんて時は他人様と技術をシェアするなんて言ってられないだろうし。
きちんと追っかけようとしたら外国語で論文読まないといけないだろうし。
色々敷居が高いってのが一因として有るんじゃないでしょーか。
科学がうまい事運用されていないのではないか、という疑念と、「科学的思考」が我々の思考形態と切っても切れなくなっている事の双方が「科学嫌い」な心象を作っているのでは。
投稿: おまーん | 2008年8月18日 (月) 21時18分
>理系やってますさん
ちゃんとしててインパクトないとか、夢がないってのは、わかりますね~(≧∇≦)
>kyuさん
娘1号がAB型です(´д`)
>おまーんさん
「誰のための科学か」って問題はありますよねー。昔の左翼がよく問題にしてました。
ちゃんと理解しようと思うと大変すぎるってのも実際そうですよね。
科学って体制側の道具であり、難しすぎるため、当然の反作用として科学嫌いが生じてくるんでしょうかね~(;´∀`)
投稿: 福地 | 2008年8月19日 (火) 00時41分
福地先生はじめまして。天鳳でプレーしてる国立です。
もう天鳳は飽き気味なんですが、雑スレと先生のブログはよく見ていて、毎記事楽しく読ませていただいています。中でも昇段戦の記事は、自分の良き記念になっています。今見れば、そんだけpt稼ぐ暇あったら勉強しとけよバカだなこいつ、と思いますが汗
…実は、カウンターでピッタリ150000番を踏みまして、嬉しくて勢いで書いてしまいました。反省してます。
ブログの発展と先生の七段復帰をこっそり祈っております
(/ω・\)チラッ
投稿: 国立君 | 2008年8月19日 (火) 00時43分
>国立君さん
おお、いらっしゃい!
さっき人とメッセで話ししてて、もうすぐ15万だと言われ、見たときは150004でした。そうですか、国立君さんでしたか(≧∇≦)
麻雀って、学業とか仕事が行き詰った人がハマるもんで、その時間を真面目にやってればってのは無理なんですよ。気が狂っちゃいます。ぼくが天鳳やってるのも仕事からの逃避で、じつは先行きけっこうヤバイんですが…(´д`)
またどうぞよろしくです~(´▽`)
投稿: 福地 | 2008年8月19日 (火) 00時49分