【教育】私立中高の価値
こんなものを見つけた。
40年前の東京の私立高校の難易度ランク
今の序列と大きくは変わっていないが、やはり多少は違う。
男子校で評価を落とし、全8ランクのうち上位3ランクから外れたのは、成蹊、成城学園、東京電機大学、芝浦工業大学工業、正則、森村学園、工学院大学、成城、獨協、京華、日本大学第一、日本学園、武蔵工業大学付属、國學院、芝浦工業大学、聖学院、明星学園 明星といったところか(よく知らない学校も入っているので間違っていても御容赦を)。
評価を上げたのは、早稲田実業、巣鴨、攻玉社、本郷だ。
女子校で上位3ランクから外れたのは、三輪田学園、森村学園、跡見学園、恵泉女学園、調布、東京女学館、國學院、明星学園、明星か。
評価を上げたのは、光塩女子学院、頌栄女子学園、豊島岡女子学園、吉祥女子、晃華学園だ。
男女共通して目につくのは、かつて最高ランクだった成蹊と、第2ランクだった成城学園だろう。今ではさほどの難関ではなくなっており、没落貴族を思わせる。
全体として言える傾向は、大学附属の凋落だ。人口増加時代には、将来の進学先を前もって押さえてしまうことには価値があった。だが人口減少時代に入って、前もって将来の進学先を押さえることには価値がなくなった。土地と一緒で、将来値上がりしそうなら早めに買ってしまう方がいいけれども、将来値下がりしそうなら実際に使うときになって買った方がいい。
今は待てば待つほど得する時代なのだ。だから将来の進学先を押さえる必要はなくなり、大学附属は凋落している。ただし、早稲田や慶応など、大学附属であっても、今でも最高人気のところもある。その違いは何かわからないけれども、輝きを保つ学校もあれば失う学校もある。
また、大学附属ではないが、オリジナルティあふれる教育を行う学校も人気を失っている。森村学園や自由学園などがそう。今では独特の校風を持った私学らしい私学は人気を失い、進学校的な雰囲気を持った学校でないと人気がない。ぼくの姉は自由学園を出ており、ここがいかに魅力的な学校か、ぼくの親などはいまだに熱弁をふるうけれども、今では実質的に全入なのだ。
こういった学校は簡単に校風を変えられない。変えようとしたら教員を総とっかえすることになる。私学らしい私学は受難の時代だ。大学附属の場合は、半附属になって進学に力を入れるという手法があるので、どの学校もそちらに走り出しているのがこのところの風潮だ。
最近でも、子どもの受験に際して大学附属を考える親は多い。そして大学附属は、中学受験では人気を失っているが、高校受験では今も人気がある。しかし(すべてのケースとは言わないけれども)、親が大学附属を考えるときは旧来の思考法に囚われていることが多いのだ。中央大学ですら公立中学を附属化し、将来の学生をキープしようとしている時代なのである。
今では高校の名前には価値がなくなり、高校は大学へ進むための単なるプロセスとなった。高校の教育内容には価値があるけれども、それが大学につながらなかったら意味がないと考えられている。そして今、どの大学を出たかは最終学歴として意味があるとされているけれども、将来はそれすら意味を失うのだろう。すでに高校の名前には価値がないように、大学も単なるプロセスとなり、生涯実力社会となる。伝統や独自の教育力は春の雪のように消えてゆき、就職力ランキングのみが残るのだ。
今現在の能力がすべて。そのためには、今を楽に過ごそうというシステムはマイナスでしかない。それが現代的な思考法となったのだ。
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コメント
実質的に就職力ランキングから逆算される大学名ブランドだけが残るという意見に賛成。そういう意味で「スクリーニング装置」としての教育は残るが、「教育それ自体の価値」云々というものは世知辛い21世紀には消え去るのみなのかもね。で、就職力はグローバルに決まると。多国籍企業としての一流大学は残っても、中小企業としての中堅大学は没落してゆくと。
一部の個性派教育は生き残るだろうけど、そういうのも、シュタイナー学校みたいに、「最終的に受験に有利」てのに担保されているんだよねえ。
投稿: 黒糖焼酎 | 2007年9月 9日 (日) 17時37分
>黒糖焼酎さん
そう、これから大学もグローバルランキングの中で位置づけ直されるでしょうね。それほど大きくは変わらないと思いますが。
グローバルな時代になると、その一方でローカルなものが注目されることになります。そのとき、独自の教育を行っているという理由で高く評価される学校がどこになるかは、まだまったく見えていませんね。
投稿: 福地 | 2007年9月13日 (木) 16時46分