« 【本】不義密通 | トップページ | 【麻雀】同人誌発売中 »

2007年6月 7日 (木)

【麻雀】凸本を振り返って

『超入門 科学する麻雀』が発売されて半年あまりがたった。感想なども含め、簡単に振り返ってみよう。

★1)まず、思ったより売れなかった。

いや、売れなかったというのは厳しすぎる表現だ。普通の麻雀の本の推測5倍くらいは売れている。だから十分に売れてはいるのだが、正直もっと売れるかと思っていた。講談社現代新書の『科学する麻雀』のように増刷の嵐になるかと期待していたら、まだ一度も増刷になっていない。

理由はわからない。

値段が千円以上するからなのか、前著と内容がかなり重複しているからなのか、新聞や雑誌に紹介されなかったからなのか、凸のカリスマ性が衰えたのか、本屋で雑誌や文庫や新書のコーナーまでは見るけどそれ以上は見ないという人が予想以上に多かったのか。いや、これが普通なんですけどね。

売れ行きがいいのは紀伊国屋などの大書店なので、流通の問題は大きそうだが、要因を絞る根拠もデータもない。不明だ。

★2)それからこれは前にも書いたことだが、以前は、これから凸2号、凸3号、凸4号などが続々と登場してくるんじゃないかと思っていたけど、そう簡単にはいかないことがわかった。2号すら出てくるかどうかわからない。

この本について、ブログなどでよく「文系なので数学的な部分はよくわかりませんが……」と書かれている。じゃあ理系ならわかるのかといったら、どうやらそうでもないようだ。それどころか、理系でも9割以上の人は数学的部分について理解できてないみたい。

統計学を理解できることとと自分で使いこなせることには天と地ほどのへだたりがあるけれども、理解の水準に達している人すらほぼいないように思われる。今回の仕事に当たって、再現するくらい簡単にできるだろうと甘く見ていたぼくも、書いた原稿は凸から間違いだらけと評されてしまった。

正確にいうなら、世の中に統計学を使える人はいっぱいいるけど、そういう人は麻雀にはハマらないのだろう。麻雀にハマるタイプと数学にハマるタイプは重ならないんだと思う。ぼくの知る範囲では、理系の人で麻雀が好きだという人はそれなりにいるのに、麻雀に科学的思考を(多少なりとも)使えている人はほぼ見たことがない。理系の人でも、一般に科学の対象じゃないと思われている分野に科学的思考を用いることができるのは、ごく少数なんじゃないか。

そして、もうひとつ大きいのは、戦術を語るセンス。戦術書を書くには、戦術を語るセンスが必要だ。麻雀が強いからといって、戦術を語るセンスがあるとは限らない。はっきりいってしまうと、麻雀が強い人の99%には戦術を語るセンスはない。そもそも必要ないしね。

戦術を語るセンスというのは、極端に単純化したモデルを提示することだ。でも、実際の麻雀を打つには、単純化したモデルは必要ない。麻雀の能力が上がれば上がるほど、状況を複雑に場合分けして考えるようになる。それをあえて単純化するわけだから、これは麻雀の能力とは別物の、ある種の抽象化能力なのだ。

凸と実際にやり取りしてみてわかったのだが、彼には抜群のセンスがあった。雑誌『近代麻雀』に「数字で語る麻雀」という記事を連載しているひいい氏と比べてみるとわかるだろう。率直にいってしまって申し訳ないのだが、ひいい氏にはセンスがなく、凸にはセンスがある。凸の戦術は動的で、ひいい氏の戦術は静的だ。

そもそも、麻雀のデータを集めようとする人間はデータマニアで、そういう人はデータそのものに興味があって、そこから先に思考が発展しない。思考が先走るタイプは地道なデータ取りは苦手だ。データ収集の資質と抽象化能力は折り合いが悪いのである。

例として適当かどうかわからないけど、世界史や日本史を学ぶ意味は、過去を知ることによって未来を予測することだと説明される。でも、歴史学者は過去のこまかいことを調べているばかりで、そこから未来予測などは絶対にしない。未来予測というのは大胆にモデル化することであり、歴史を調べるのは地道な作業だ。資質がまるで逆で、「過去を知ることは未来を知ること」だという説明は机上の空論にすぎないのである。

統計学を使うこと(データ収集)と戦術のモデル化も同じようなもので、正反対の資質が必要とされる。両方を兼ね備えているのは突然変異的な変わり者だけで、そういう人間はめったにいないのだ。

というわけで、凸2号、凸3号、凸4号が出てくる可能性はそう高くはない。ネット麻雀が普及したからデータの時代になったというような簡単なものではなかった。

なので凸さん、これが使命だと思って、さっさと公務員を辞めて麻雀研究ニートになりなさい。

|

« 【本】不義密通 | トップページ | 【麻雀】同人誌発売中 »

コメント

「教えて科学する麻雀」を購入後、改めて「科学する麻雀」を購入。
迷いが軽減した事で雀力が飛躍的に向上し、結果的に麻雀にハマる事に?

そして「基本型80」を経て、今はネマタ本と雀ゴロK本がバイブルに。

投稿: きゅう. | 2016年3月25日 (金) 08時22分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【麻雀】凸本を振り返って:

« 【本】不義密通 | トップページ | 【麻雀】同人誌発売中 »