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2007年5月の2件の投稿

2007年5月28日 (月)

【本】不義密通

江戸時代、享保19(1734)年のお話。

加賀藩士、中黒六左衛門が隠居した。あとを継いだのは養子の助右衛門だった。彼には実子がいたのに、なぜか甥を養子にしてあとを継がせたのだった。そこにはこんなドラマがあったのだ。

六左衛門には妻との間に3男2女があった。ある年、江戸勤めを終えて帰ってきた彼の耳に、とんでもない噂が入ってきた。自分の留守中、妻が不義を犯したというのである。

密男(まおとこ)は誰か? 妻の周辺を監視していると、なんと、とんでもないことに、妻から次男にあてた「密状」を発見し、相手が次男であったことが判明する。

そんな獣の所業など…、何かの間違いに違いない。とうてい信じられることではなかった。

しかし、3人の息子たちを厳しく問い正した結果、妻と次男の密通はまぎれもない事実であった。2人の関係は、妻のほうから仕掛けたことが明らかになった。

六左衛門は妻を責め、ひそかに自害させた。

困ったのは次男の処置だった。次男は他家に養子に入り、跡継ぎになっている。手討ちにしても、自害させても、表沙汰になってしまうと養子先の家の存続が危ぶまれる。

かくして六左衛門が取った手立ては事故死だった。彼は次男の落馬を仕込んだ。幸運なのか不運なのか、次男は一生かたわとなるほどの重傷は負ったものの、死には至らなかった。

重い障害を負った次男に、父はいった。「以後ふたたび女と交わるな」と。

こうして事件は解決したようだったが、次男の伝十郎は、2、3年もすると妾(めかけ)を作り、子まで産ませてしまう。

激怒する六左衛門。彼は次男を義絶し、長男と三男にこう告げたのだった。

「お前たちの母は人の道から外れた女なのだ。そうとも知らずに俺は妻にし、多くの子までもうけてしまった。そんな女の腹から生まれたお前たちに家督を譲っては、中黒家のご先祖様にもご主君様にも申し訳が立たぬ」

六左衛門は長男と三男に生涯独身ですごすように命じ、中黒家の血脈から汚れた血を断つため、養子を迎えたのだった。

その後、長男は川で溺死、三男は出家した。六左衛門は隠居後「暫無」と称したという。

 * * *

てな話が満載の『不義密通 禁じられた恋の江戸』つー本を読んだ。
むっちゃ面白かったけど、また無意味な知識ばっか…。

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2007年5月26日 (土)

【本】『ニッケル・アンド・ダイムド』

また長らくサボってしまいました。読んだ本の感想など書きつつボチボチ再開していきましょう。

『ニッケル・アンド・ダイムド―アメリカ下流社会の現実』

★★★☆☆

アメリカ下流社会の現実がリアルに描かれ、明日の日本の姿を思わせるってことで、あらゆる新聞や雑誌の書評に載りまくった本。

読んでみたら正直期待はずれ。ダラダラ書かれていて、かなり手ぬるい。同じ出版社から出てるイギリス人が書いた『ハードワーク』とほぼ同じ印象。

内容は、低賃金労働はつらかった、家賃を払うのが大変だった、本当に単純な仕事などなかった……てな感じ。

その仕事につくまでにどんな手続きが必要で、その仕事ではどんな苦労をして……ということが、こちらがアメリカ社会に生きていないからかもしれないけれども、冒険譚としてちっとも面白くない。さらに、そういった時給7ドルばかりの仕事に従事している他の人たちの生活像もあまり見えてこない。

どうも英米ジャーナリストの世界では「実際にやってみた」「大量の文を書いた」(なぜか分厚い)ということが、やたら評価される気がする。体験するのってそこまで大事か? 面白いとか、よくわかるほうが大事なんじゃないか?

同テーマで日本人の書いた本に『潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影』があり、これとてさほどとは思わなかったけど、それでもまだ面白かった。

潜入ルポじゃないけど、この分野で最高のものといえば漫画の『闇金ウシジマくん』じゃないかね。

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