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2006年12月12日 (火)

【教育】教育格差9

えげつないまでにしつこく「日刊ゲンダイ」の連載から。


この春、シングルマザーである知人Aさんのお嬢さんが高校に入った。Aさんは、いいバイト先を見つけて、バイトしまくる高校生活を送るようにハッパをかけているという。Aさんの言い分はこういうものだ。

「あたしも高校のときはバイトばかりで、学校よりもそっちのほうがずっと楽しかったし、学ぶことも多かったのね。それは今になっても大きな財産だと感じている。だから高校時代はいいバイト生活を送って、自分の携帯代や遊ぶお金もそこから出しなさい。そうすればお金の大切さもわかるからって、そういって聞かせてるの」

この話を聞いたとき、まさに職業が再生産される瞬間を見たように感じてしまった。

最近では高校生の生活が2種類に分かれている。勉強ばかりの高校生とバイトばかりの高校生だ。昔は、クラブ活動に燃えている高校生や、ただダラダラ過ごしている高校生も多かった。それが今では、放課後の行き場が塾とバイト先に二極化しつつあるのだ。塾に通う子は大学に行く子たちであり、バイトに通う子は高校を出たらフリーターになる子たちである。

彼らの道は高校入学すぐにバイトを始めるかどうかで決まる。すぐバイトを始めて、自分で稼いだ金を使って仲間と飲みに行ったり、バイト先で恋愛したりすると、高校生活は刺激が足りないものになってしまう。彼らは大学に進む者たちよりも、一足先に消費生活者になり、大人になるのだ。

フリーターになる子は、家族に非正規雇用の者がいるケースが非常に多い。こうして非正規雇用は遺伝していく。そうなると、Aさんの教育方針は我が子をフリーターへ追いやっているように見えるが、そんなことはない。多額の教育投資を行えない親は、子供に、非正規雇用であっても労働の喜びを見つける方法を教えねばならない。自身がサービス業で働くAさんは、お嬢さんに非正規雇用の世界でのサバイバル法を教えているのだ。

東大法学部に通う女子学生Bさんは、ロースクールに進学し司法試験に受かることを目指すという。だが、彼女が本当にやりたいのは出版だという。だが彼女は、親が司法職であることもあって、司法試験に受かるまでが親から与えられた任務だと考え、自分のやりたいことは資格取得後にやろうとしている。ここにも職業の遺伝があり、揺れる二世の想いがある。

このところ政治家や芸能人の世界では、二世、三世ばかりが目に付く。その傾向は、若者になればなるほど強まっているようだ。あらゆる職業が世襲化したときに、この国は活力を保ちうるのだろうか。(つづく)

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