【教育】教育格差7
いよいよしつこく「日刊ゲンダイ」の連載から。
最近ある本を読んでいたら、この記事、あるいはぼくの本をほぼ写ししながらも、巻末の参考文献には挙げられていなかったので、少しいじけました(笑)。言い回しからわかります。
いま30~40代の親のなかは、塾に通った経験がないという人も少なくない。地方出身者の場合はなおさらだ。こういった親の経験が、子供の教育においては〝技術差〟となる。今の教育はどこからどんなサービスを購入するかという、消費者としての力を競うものになっているからだ。
受験産業は過去十数年の間に着々と高度化した。とくに90年代以降、少子化の時代に入ってからは、細分化、専門化、先鋭化している。たとえば、以前は私立中学の子が通う塾など存在しなかった。中学生が通う塾は高校受験用が常識だったからだ。それが今では、有名私立中学に受かるやいなや、東大受験専門塾に手続きする親が多い。
有名なのは鉄緑会だ。「てつりょくかい」と読み、「鉄」は東大医学部の同窓会である鉄門倶楽部、「緑」は東大法学部の同窓会である緑会を意味する。東大生と東大卒業生しか講師とせず、入塾した生徒たちはみな東大か医学部合格を目指す。無試験で入れるのは、東大合格ランキング上位校の新入生のみだ。つまり、最初から東大に入れる可能性の高い子だけを選び、その子たちを高い確率で東大に入れることが売りの塾なのである。
驚くほど閉鎖的で差別的な姿勢だが、これが大人気なのだ。親たちはその姿勢に怒るどころか、逆に「この塾で付いていけたら東大は間違いなし」と殺到する。いっさい宣伝しないにもかかわらず、わが子を有名私立中学に入れるような親たちは、この塾について熟知しているのだ。とはいえ、予習のノルマが非常にハードな塾なので、有名私立中学に入るような子でも、ついていけない者は多数出る。
もっとありきたりな高校受験用の塾でも、子供に合わせた塾選びは重要だ。小さな個人営業の塾と大手の塾では一長一短がある。個人塾ではクラブ活動の都合に合わせて曜日を変えてもらったり、学校の宿題を手伝ってもらったり、フットワークがいい。一方、カリキュラムと教材に関しては大手に分がある。進路指導のデータも大手が強い。
こうして教育は消費財化しており、親の眼力と経済力が子供の学力を決める。自民党の総裁候補者たちは格差社会の是正を公約に掲げているが、再チャレンジしようにも、人生のスタートの時点ですでに大きく差がついてしまっているのである。格差の壁の厚さを10代でビッチリ心と体に叩き込まれてから、20代になって再チャレンジできるようにするといっても、まったく解決にはならないのだ。過酷な状況に置かれ鬱病になってしまった人に、「頑張れ」と励ますようなものでしかない。(つづく)
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