【教育】教育格差4
しつこく「日刊ゲンダイ」の連載から。
日本の義務教育の分厚さは世界一。そんな神話がかつてあった。日本は世界に冠たる教育大国だと、自他ともに認めていたのである。
今はどうなのかというと、教員の給与では相変わらずトップ水準だが、全体としてはそうも言えない。いろんな国に住んだことがある人の意見を聞くと、医療と教育で日本は住みにくい国だという。とくにひどいのは教育の私費負担で、オランダやスペインに住む日本人は、絶対に日本で子育てをしたくないと口をそろえる。そう、子供の教育にカネがかかるという点では、日本は世界最高どころか、最悪レベルなのである。
OECD諸国28カ国を比較したデータを見てみると、日本の教育のお寒い現状がはっきり浮かび上がってくる。大学など高等教育への公財政支出は韓国と並んで最下位。幼稚園など小学校前教育への公財政支出も下から5番目。OECD28カ国中で義務教育に関しては中くらいの水準にあるが、その前と後の時期に関しては、ほぼ最低水準といって過言ではない。
さらに塾代なども考えると、子供に教育を受けさせたいと願う親にとって、日本と韓国、アメリカの3カ国が最底辺グループをなしている。教育にカネがかかりすぎて、庶民には手の届かないものになりつつあるのだ。
こんな状況に対して、国際的に厳しい視線が注がれている。高等教育の無償化を掲げるユニセフから、高等教育の私費負担を下げるよう何度も勧告されながら、逆に学費は上がる一方だ。日本は1979年に国際人権規約を批准しているが、そのとき、無償教育に向けて努力するという項目は留保してしまった。同じように留保をしているのは、日本以外にはマダガスカルとルワンダのみ。アメリカは社会権自体を批准していないから、こんなところでも日本はアメリカの後追いだ。
文部科学省の出している「文部科学白書」には、高校から大学の7年間だけで教育費に1人当たり平均1000万円かかっていると記されている。これが特別に教育熱心なわけでもない家庭の平均的な教育費負担なのだ。
さらに教育熱心な家庭や、地方在住で自宅から大学に通えない家庭、また私立大学の理系に子供を通わせている家庭では、これ以上の負担がかかっている。大学終了後に、大学院やロースクールなどに通わせようとしたら、さらに数百万円かかる。子供が複数だったらその人数分かかることになる。1人当たり1000万円を出す余裕のない家庭では、どんなに優秀な子供でも大学には行けないのが、いまの日本なのである。 (つづく)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
条約の批准を迫ったユニセフの担当者が、
「世界第二位の経済大国が、将来的に高等教育を含めた教育の無償化に向けた一歩を踏み出すという約束さえ出来ないのなら、私の仕事は達成不可能だと言わざるを得ない。」みたいな発言をしてるのを聞いたことがある。
(麻雀ブログにする気かと思ったぜ…。)
投稿: 宮本浩樹 | 2006年11月25日 (土) 13時16分
>宮本浩樹さん
そうなのか。
東アジア一帯とアメリカはひどいもんだよね。教育費の私費負担に関しては。
アメリカは奨学金制度が充実してるから、日本は最悪といっていいかも。いや、韓国には勝りそうだけど、まさに最下位を争ってる。
これで大きな社会問題にならないところが、また日本だというか。
投稿: 福地 | 2006年11月25日 (土) 23時19分
いやいや日本の奨学制度のカネのかけ方は世界一ですよ。ただし外国人(中国人)向け。留学生なんか僕なんかより全然リッチなんだもの。やっぱ利権のある業界は強いわ。庶民の教育なんてなんの利権にも結びつかないもんなあ。
投稿: 黒糖焼酎 | 2006年11月26日 (日) 00時15分
>黒糖焼酎さん
なんとそうなのですか!
それは知りませんでした。調べねば…。
投稿: 福地 | 2006年11月26日 (日) 02時40分