【教育】変貌する受験産業
本屋の実用書コーナーに行くと、『図解○○業界』とか『一目でわかる○○業界』という本が置かれている。不動産であったり、金融であったり、一冊で各種産業が概観されているわけだが、そのなかに『よくわかる教育産業』とか『一望できる受験産業』という本はない。教育産業をまとめて扱った本は一冊たりとも存在しないのだ。
唯一あるのはこの本↓だが、これも残念ながら、いくつかの塾の情報を集めたに過ぎず、マーケット全体を扱ったものではない。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4782531621/
なぜ存在しないのか? そういった本を出しているある出版社の人に聞いたところでは、出したいけれども、適切な書き手がいないという。幅が広すぎるし、地域によって多様に分布しているから、とにかく扱いにくいのだ。
21世紀になって、受験産業は大きく揺れ動いている。いろんな傾向があるけれども、・大学受験市場の縮小、・中学受験市場の拡大、・塾間の連携化、・サービス内容の多様化などが挙げられるだろう。順番に見ていこう。
すでに大学全入時代が到来しているため、大学受験市場は縮小しつつある。高校受験も同様だ。そこで塾や予備校は、サービスを多様化している。たとえば、集団授業を受けながら苦手分野では個別指導を受けるとか、かゆいところに手が届くサービスが競われている。そこまでしてくれるのかと驚いてしまうほどの過保護ぶりだ。
その一方で、中学受験市場は拡大している。中学受験しない子でも小学生の塾通いは普通のことになった。また小学校受験をはじめとして、幼児教育も拡大している。
そして生徒が減少しているため、どの塾でも生徒を囲い込むようになった。以前は中学受験なら中学受験、大学受験なら大学受験と、守備範囲を守っている塾が多かったが、最近では専門外のノウハウは他の塾と提携することによって手に入れ、ずっと生徒を囲い込む傾向が強まっている。
また、サービスの多様化も進んでおり、大手予備校では教師用の授業を行ったり、以前では考えられなかったサービスも登場している。
全体としては、受験産業自体はゆるやかに縮小し、大手の寡占化が進んでいる。中小の塾には冬の時代だ。
今の親世代は塾に通ったことのない人も多い。通った経験のある人でも、今の塾や受験がどういうものかは、あらためて調べてみないと思わぬ勘違いをしてしまったりする。
もっとも、昨今の学力不安には底知れないものがあり、お気楽な勘違い父さんなど最近は見かけなくなった。そこまで不安を抱いてもしょうがないのにと思うことは多い。親はなくとも子は育つし、子育ての半分くらいは放っておくことだと思うのだが。
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コメント
関大の先生がこんなことを書いておられました。
http://d.hatena.ne.jp/dice-x/20061105#p1
たしかに教育というマーケットについては誰かがきちんと語る必要がありますね。。。
私、現在「介護福祉」で同じような本をつくろうとしており、大変往生しております。。。
こうした状況と、(政治)権力とのリーク説を絡めて考えたとき、何が見えてくるのでしょうか。。。
投稿: まっちゃん | 2006年11月 5日 (日) 21時23分
>まっちゃんさん
教育とか受験というマーケットは全体としてほとんど捕捉されていません。これだけ大きな存在だというのに。
なんか教育を取り巻く状況は変動してますね。
投稿: 福地 | 2006年11月 6日 (月) 16時40分