【教育】未履修問題の根本は何か?
未履修問題は拡大する一途となっている。各地の高校で、必修科目の授業を生徒が受けていなかった問題だ。生徒の問題ではなく、高校側がそんなカリキュラムを組んでいた。
この問題は全国に広がっているが、あえていうなら地方の公立高校が多い。それも、2002年の新課程になってから増えたという。つまり、週休2日制になり、さらに高校でやる内容が増えてから、それでも大学進学実績を求められてしまう高校が、やむなく手を染めるようになったケースが多いのだ。(※その後、私立高校のほうがやや多いことが判明。)
今、地方の公立進学校では、生徒たちがどれほど勉強漬けにされていることか。もう悲惨なもんだ。クラブ活動すら禁止される事態も起きている。必死で受験対策の3年間を送っている生徒と送らせている高校を、今回の未履修問題が襲った。ホント気の毒だと思う。
なぜ、いまだにこんな建前が問題にされてしまうのだろう。受験に関係ない科目なんて生徒だってやりたくないし、高校だってやらせたくない。なぜ生徒も高校側も受験対策ばかりやりたがるのか。それは、そのほうが「得」だからだ。
もし、世界史や公民をきちんとやっていることが評価される世の中だったら、生徒だって必修で縛られずとも学ぼうとするだろう。幅広い教養が大事だというお題目を唱える人はいるけれども、実際にそれが問われる世の中ではない。そんなことは建前にすぎないと誰でも了解している。
ルールはルールだからという形式的なお題目などを唱えているようでは、いつまでたっても事態は変わらない。ルール破りをしたくなる「歪み」を解消しないと、抜本的な解決にはならないし、小手先の対策を続けることは教育を腐らせるだけではないか。
根本は受験制度にある。そして、学校で学ぶ内容と受験とのダブルスタンダードが両立している構造にある。たとえば、大学入試に「社会総合」とか「理科総合」という科目があって(理科は実際にある、入試ではほとんど使われないが)、そこですべての内容が問われるようになっていれば、こんな問題は起きないのだ。
ここで話は飛ぶけれども、万引きと脱税はどちらが罪は軽いだろうか? 問い方を変えるなら、どちらの罪が敷居は低いのか?
普通に考えたら、明らかに万引きだ。そこらの子どもはみんなやっている。だが最近では、万引きしたことないけれども脱税する者が増えている。
なぜ、そうなるのか。勝者一人勝ち社会は経済犯罪を生み出す。勝者と敗者の差があまりにも大きいと、品のいいエリート候補たちも平気でルールを犯すようになってしまうのだ。
「『うそつき病』がはびこるアメリカ」という本があって、そこには、アメリカの名門高校で、いかにカンニングやレポートのパクりが横行しており、医者に金を積んで学習障害の診断書を取ることすら増えているかという現状が報告されている。学習障害の診断書があると、試験時間が長くなって有利になる。
必修科目を学ぶかどうかなんてかわいいもんだ。経済格差の拡大の果てには、さらなるモラルの失墜が待っている。日本が追いかけているアメリカはそんな社会だ。
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コメント
だからさー、アメリカ追随から離れないとねー。
アメリカ嫌い、ツーーーンだ。
投稿: うだ | 2006年11月 1日 (水) 23時51分
>うださん
そうそう、アメリカから離れ、今度は中国の傘下へレッツラゴー!
あれ?
投稿: バカセ | 2006年11月 2日 (木) 01時50分
教育基本法の書き換えに関連して、教育再生会議なんていう諮問機関が作られてるらしいけど、そこに教育の専門家はどれくらい入ってるのかな?
もちろん東大の教育学部から何人か…、関与してるんだろな!
と素人は考えるんだけど、どうなんだろ?
投稿: 宮本浩樹 | 2006年11月 3日 (金) 23時54分
僕の意見は高校の必修なんていくら縛ったって無駄というもので福地さんの意見に賛成なのだが、その代わり大学受験資格テスト(バカロレア)を実施し理社必須にしろと思う。
投稿: 黒糖焼酎 | 2006年11月 4日 (土) 00時11分
>宮本浩樹さん
教育の専門家、いっぱい入ってますよ。どちらかというと、従来は専門家ばかりだったのが、今回は有名人などをいっぱい入れたことが特徴でしょうか。
>黒糖焼酎さん
そう、理社すべて必修で、試験は無範囲にすればいいと思いますよ。範囲があるからテクが発達するわけだし。
といっても、無範囲にすると、格差はさらに広がっちゃいますけどね。
投稿: 福地 | 2006年11月 6日 (月) 16時36分
>宮本浩樹さん
その後もう一度見てみたら、教育の専門家まったくいませんでした。軽視されてます。
投稿: 福地 | 2006年11月15日 (水) 16時24分