【教育】学校と企業の狭間
いま、求人広告を出す会社を訪問し、その求人原稿を書く仕事をしている。
知り合いのベテランライターに「なぜそんな仕事するの?」と笑われた。駆け出しライターみたいな仕事だという意味だ。確かに、最初から記名ライターだった(原稿料は時給にするとマックのバイト以下だったけど)ぼくにとって、まとまった無記名ライターの仕事は初めてな気がする。
だが、これが面白いのだ。訪問先の会社を教育系にしてもらったため、それは大きく2つに分かれる。受験関係と企業の研修系だ。この企業の研修系が知られざる世界であり、面白い。
企業は大きくなればなるほど、社員の能力開発に興味を持ち、そこに熱意を注ぐ。研修にも熱心だ。その研修には実学的なもの(例えばマーケティング)もあるが、実学的でないものもあって、それが何というかアメリカ的で、企業社会の「文化」としか言いようがないような独特な世界となっている。
1例を挙げると、これ↓などがその典型。
http://www.leadcreate.co.jp/org/b1/01.html
1)変革・創造行動、2)対人行動、3)管理行動、4)問題解決行動、5)目標達成行動、6)基本行動、という6つの分野の行動力をチェックし、得意なものと苦手なものを自己理解すると同時に、その向上策を提示するというもの。まあ簡単に言ってしまうなら、総合的な行動力を身につけましょうということか。
こういったものは学校教育にはまったく取り入れられていないし、アカデミズムの世界からも無視されている。上場企業の人でないと目にすることはないだろう。
学校教育とアカデミズムの世界は「知」を目指しており、「行動」は学ぶ対象とされていない。だが「知」だけの頭でっかち人間は企業には必要とされておらず、じつは「行動」が一番大切だったりする。「知」と「行動」の両立を目指してアメリカの企業社会で開発されたプログラムが日本にも輸入されつつある。それが、こういった企業研修の正体だろう。
日本にも知行合一の陽明学的伝統がなかったわけでもなかろうが、少なくとも今の教育制度には組み込まれていない。クラブ活動を通じて学ぶくらいの位置づけだ。
ノーガキだけでなく「行動」も大切なことは言うまでもない。だが、こういった外資臭いプログラムを見ると、そこはかとないいかがわしさを感じずにはいられない。
上場企業に入ったことない人にとっては、こういったものは見たことも聞いたこともないだろう。さしたる存在とは思っていないはずだ。だが、上場企業の人にとっては日常的なもので、その存在感はかなり大きい。日給が8万円から(もちろん研修企業によって違う)などという求人を見ると、そこにビッグマネーが動いていることは理解できる。まさに成長分野なのだ。
求人には時代が表れる。ここにもまた日本の先行き、そして教育の未来が垣間見えるような気がする。
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