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2006年10月の2件の投稿

2006年10月 6日 (金)

【教育】家庭教師を使う富裕層

家庭教師派遣センターみたいなところの話を何軒か聞いてみたら、今の首都圏における受験の主戦場は、高校受験ではなく中学受験なのだとあらためて思わされた。

小学生から社会人まで幅広く対象としているある派遣センターでは、派遣対象は、中学受験7割、高校受験1割、大学受験1割、社会人1割(資格試験や医療英語)だという。これがそのまま全体の割合だということもなかろうが、市場の動向を反映していることも確かだろう(ただし、全国的な学習塾の状況を見るなら、今でも高校受験対象が最大ボリュームではある)。

中学受験専門のとある派遣センターでは、コースが5つに分かれている。

1)家庭教師だけで勉強するコース
2)大手塾(日能研、SAPIX、四谷大塚、栄光ゼミナール、早稲田アカデミー、市進学院、ENA、進学舎)と併用するコース
3)その他の塾と併用するコース
4)有名進学塾に入塾するためのコース
5)国私立小学校在籍者が中学に内部進学するためのコース

という5つだ。

これには、なんとシステマティックなのかと驚かされた。子供を大手塾に行かせて、そのフォローに家庭教師を使うことまでシステム化されているのだ。大手塾に3年間行かせるだけで200~250万円かかるのだが、さらに100万円規模の金を投資するのである。家庭教師を使い始める時期は、小5の秋から小6の夏までが多いというから、100~300万円くらいの金を使うのだろう。

父兄はやはり富裕層が圧倒的に多く、医者、歯医者、外資系勤務者、自営業などとなる。仕事内容を聞くわけではないが、家に通い父兄と話をするうちにわかってしまう。

対象となる子どもの学力は、最終的に中堅上位校に進むレベルが多い。というのも、御三家などを狙う子はかなり飲み込みがよく、家庭教師を必要としないのだ。また、そういった子たちは塾で手厚いフォローを受けていることも大きい。どの塾でも、実績を叩き出してくれる優秀な子は大事にされる。

なので、進学先となる中学は、男子校なら、本郷、芝、攻玉社、海城などであり、女子校なら共立、大妻、光塩、晃華、吉祥女子、豊島岡などだという(海城と豊島岡は中堅上位というには難しすぎるが)。

豊かな階層は多額の教育投資のもとにハイレベルな教育を受ける。その先端的な現象は、中学受験そのものよりも、そのフォロー態勢に表れる。家庭教師の使用こそ、その典型なのだ。

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2006年10月 5日 (木)

【教育】学校と企業の狭間

いま、求人広告を出す会社を訪問し、その求人原稿を書く仕事をしている。

知り合いのベテランライターに「なぜそんな仕事するの?」と笑われた。駆け出しライターみたいな仕事だという意味だ。確かに、最初から記名ライターだった(原稿料は時給にするとマックのバイト以下だったけど)ぼくにとって、まとまった無記名ライターの仕事は初めてな気がする。

だが、これが面白いのだ。訪問先の会社を教育系にしてもらったため、それは大きく2つに分かれる。受験関係と企業の研修系だ。この企業の研修系が知られざる世界であり、面白い。

企業は大きくなればなるほど、社員の能力開発に興味を持ち、そこに熱意を注ぐ。研修にも熱心だ。その研修には実学的なもの(例えばマーケティング)もあるが、実学的でないものもあって、それが何というかアメリカ的で、企業社会の「文化」としか言いようがないような独特な世界となっている。

1例を挙げると、これ↓などがその典型。
http://www.leadcreate.co.jp/org/b1/01.html

1)変革・創造行動、2)対人行動、3)管理行動、4)問題解決行動、5)目標達成行動、6)基本行動、という6つの分野の行動力をチェックし、得意なものと苦手なものを自己理解すると同時に、その向上策を提示するというもの。まあ簡単に言ってしまうなら、総合的な行動力を身につけましょうということか。

こういったものは学校教育にはまったく取り入れられていないし、アカデミズムの世界からも無視されている。上場企業の人でないと目にすることはないだろう。

学校教育とアカデミズムの世界は「知」を目指しており、「行動」は学ぶ対象とされていない。だが「知」だけの頭でっかち人間は企業には必要とされておらず、じつは「行動」が一番大切だったりする。「知」と「行動」の両立を目指してアメリカの企業社会で開発されたプログラムが日本にも輸入されつつある。それが、こういった企業研修の正体だろう。

日本にも知行合一の陽明学的伝統がなかったわけでもなかろうが、少なくとも今の教育制度には組み込まれていない。クラブ活動を通じて学ぶくらいの位置づけだ。

ノーガキだけでなく「行動」も大切なことは言うまでもない。だが、こういった外資臭いプログラムを見ると、そこはかとないいかがわしさを感じずにはいられない。

上場企業に入ったことない人にとっては、こういったものは見たことも聞いたこともないだろう。さしたる存在とは思っていないはずだ。だが、上場企業の人にとっては日常的なもので、その存在感はかなり大きい。日給が8万円から(もちろん研修企業によって違う)などという求人を見ると、そこにビッグマネーが動いていることは理解できる。まさに成長分野なのだ。

求人には時代が表れる。ここにもまた日本の先行き、そして教育の未来が垣間見えるような気がする。

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