【つぶ】納得いく働き方は可能か?
大晦日のこと、地元のダチと連絡がついて会うことに。
半年ほど前に会ったとき、彼は9年間勤めた出版社を辞めたばかりで麻雀ばかりやっていた。溺れているという感じではなく、どうすれば金を稼げるのかギリギリまで追い求めるスタイル。かなりの麻雀オタクで、この前の最高位決定戦を見に行ったそうだが、自分は地元のピン雀でしか打とうとしない。
会ってみたら、今はもう麻雀はまったくやっていないという。この数ヶ月やっているのはパチンコだと。パチスロが美味しいという話はよく聞くけど、パチンコが儲かるという話は聞いたことがない。どうなんだろう。
それが話を聞いてみると、ここでもすごく「プロ」っぽかった。彼がやっているのは羽根モノのしかも1機種だけだという。これなら攻略できるという機種を見つけてそれに絞り込み、その機種が設置されているホールに出勤する毎日なのだと。
そんなに遠くないエリアに、その機種があるホールを何十軒か見つけ、そこに通っている。その機種でも、釘の閉め方、バネの状態など、条件はいろいろあるから、満足いく台に座ることは難しい。玉を出す前に、その台に1日座っていられたら、それだけでもうれしいくらいだと。
儲かるのかと聞いたら、勝つときは最大1日5万、負けるときは最大1日1万5千だというから、そこそこ儲かるということなんだな。しかし、時給千円の水準は遠いという。こんなに苦労してもロクに稼げるわけじゃないし、普通のバイトした方がずっといいんだけどね。そう言って笑った。
彼とはずいぶん前からの知り合いだが、ずっとこんな感じなんだよな。いつも納得いく働き方を追い求めている。ただ稼げればいいわけじゃなく、自分が熟知している範囲で、自分の納得のいく技術を根拠として金を稼ぎたい。そんな志向がすごく感じられる。
その気持ちはよくわかる。どこまで「納得」がほしいかは、その人のこだわり気質による部分だろうけど、いかにして金を得るかはいかにして生きるかに重なるから、「納得」いかない稼ぎは「納得」いく人生にはつながらない。
彼の姿勢には昔から職人気質と呼べるような部分があって、それは麻雀でもはっきりしていた。以前、彼がリーチに地獄待ちを止めたと喜んでいたのを見て、そんなの打っちまえよと思ったりした。ぼくにもこだわり気質はあるけど、ぼくが偏差値60のこだわり人間なら、彼は偏差値70のこだわり人間なのだった。
こうして彼は、小さな世界で納得いく稼ぎ方を見つけ出しているのだが、とはいっても、その機種がホールからなくなってしまったらそれまで。そんなはかなさの上に立脚する「世界に一つだけの花」だ。
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