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2006年7月28日 (金)

【麻雀】サシウマばばあ

ぼくがまだ若くて雀荘で働いていた時分のこと、客の一人に、みんなからサイババと呼ばれているオバハンがいた。西城ばあさんだからサイババだ。

麻雀は下手くそで、負けてばかり。負け始めるとすぐ場換えを要求するヤツだった。フリー雀荘には負けて席のせいにする客が多いけど、卓の向いている方角のせいにしたのは彼女くらいだと思う。

歳は60代くらい。どっかの金持ちの愛人で、秋葉原あたりの雀荘を経営しているという話だった。サイババのどこに金持ちをつかまえる魅力があり、どこに雀荘を経営する才覚があるのか見当もつかなかったけど、若い頃は美人だったと言われれば、そんな気もしないではなかった。

ぼくと彼女の付き合いは5年くらい。もちろん麻雀するだけの関係だった。よくサシウマもした。その店では客だけでなく従業員もサシウマするのが普通で、ぼくはサシウマOKの客とはほぼ全員とやっていた。

彼女にトータルでは負け越していないはずだけど、1日単位では負けることもよくあった。そんなときは、こんなオカルト婆さんに負けるとは、俺はなんて弱いんだ!と、すごくみじめな気持ちになったもんだ。彼女と少し大きなサシウマを行き、ずっと不調のまま盛り返せず、結局4万ほど負けた朝には、心の底から死にたくなった。


数年たち、ぼくが雀荘メンバーの足を洗って出版社に勤め、その出版社も辞めて、これからどうしようかと考えていた時期のこと、近所の別の雀荘に行った。ぼくが働いていた雀荘はメンツがきつかったので、その頃は別のヌルイ雀荘に行くことが多かった。

すると驚いたことに、迎えてくれた女性従業員がサイババだった。

「いらっしゃいませ。お飲み物は何になさいますか?」

当たり前のように挨拶され、ぼくはものすごくびっくりした。それでも、知り合いだというのに知り合いらしい顔もしない彼女に、なぜこの店で働いているのか口に出して聞くことはできなかった。博打場ではよくある光景なのかもしれない。でも、実際にそんな現場に居合わせるとやはりビックリする。

夜遅くなってサイババと麻雀も打った。かつては何かと文句ばかり言っていたのに、そこではちゃんと従業員の麻雀を打っていた。それまたビックリだった。普通の麻雀を打つこともできたのか。客打ちと仕事打ちは別物。水商売のヤツほど客としてはわがままになる。そんな生きた実例のようだった。

その店を出てから、ぼくはすぐかつて働いていた雀荘に行った。彼女の身の上について聞き込みするためだ。

「いま白檀に行ってきたんだけどさ、サイババがメンバーやってんだよ。なんだありゃ?」

その質問には店長が答えてくれた。

「俺も詳しいことは知らないけどさ、店がダメになってパトロンにも捨てられたらしいよ。藤峰さんあたりなら詳しいこと知ってんじゃねーか」

ぼくはそれ以上の聞き込みはしなかった。まもなく、サイババは白檀からも姿を消した。マスターに聞けば行き先について何か教えてくれたかもしれないけど、悪趣味な気がしてそれは聞かなかった。

ああいう人って、年とったときはどうやって暮らしているんだろう。そんな漠然とした疑問はあるけれど、彼らは雀荘の人間関係から離れてしまうため、そのリアルな実例は見ることができない。今でもどこかで麻雀を打っているんだろうか? また打ちたいかと言われたら打ちたくないけどね。

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