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2006年7月 3日 (月)

【麻雀】詩人の魂

1年ほど前に作った麻雀博物館の本に、老学者がいっぱい文章を書いている。

この人、見た目は偏屈な老人って感じ。しゃべってみてもとっつきにくく、なおさら偏屈な感じがする。とにかく反応がにぶくて、コミュ二ケーションがままならない。でも、接してみると相当ナイーブなんだよね。

彼はけっこう怒るんだけど、いったんその文句に耳を傾ければ、それ以降は、まあ終ったことはしょうがないよ、もういいさ、という雰囲気になる。かなりやさしい。でも、最初に怒ったときの印象が積み重なって、偏屈な感じを与える。とにかく不器用な人であることは間違いない。

麻雀の専門家といっても、本当に詳しい分野はさらに狭くなるから、彼の知識の深さに触れるのって難しい。日本の昭和初期のこと、日本の書籍のこと、このふたつに関しては、日本で一番詳しいんじゃないかと思う。得意分野がバッティングする人がもう一人いるから、どっちが一番かはぼくには判別できない。

会話がそういった方向に向かい、こちらがある程度以上の予備知識を持っていた場合だけ、彼の魂に少しだけ触れることができる。ぼくは予備知識がまだ足りないから、その分野の話をしたことは数えるほどしかない。

彼の書く文章には詩人の魂のようなものがある。でも同じように思っている人ってどれくらいいるんだろう。彼は心を直接語ることはなくて、モノを語るから、詩人の魂といっても、その魂は知識の向こう側にある。99%に人にとっては、単なる退屈な文章なんじゃないかと思う。それが99%なのか、99.99%なのか、そこらへんはわからない。

1年前の今頃、早朝4時に彼から原稿がファックスされてきた。朝7時が締め切りということになっていた。もちろんコンピュータ時代の人じゃないから原稿はみな手書き(携帯も持ってないし)。ぼくがすぐそれを打ち込んで、2時間後にファックス。その修正が来て、またファックス。戻ってきて終了。デザイナーにメールした。

彼は自分の原稿を何度となく直す。デザイナーにすごく嫌がられている。そりゃそうだわ。普通は嫌がると思う。ぼくも同じように何度となく直す人間だから、寛容になれるのかもしれない。

今朝きた原稿は素晴らしかった。そのとき、ぼくも同じ本の原稿を書いていたのだが、まったく比較にならない。

ぼくは、彼ともう一人の専門家のフィールドからもれるものだけ自分で書いてるから、そもそもの条件が違うんだけど、それにしても…とホント思った。でも(何度も同じこと書くんだけど)、この文章をすばらしいと思う人ってどれくらいいるんだろう? 西原理恵子さんの漫画が面白くて…って方が、絶対フツーの感性だと思う。

ぼくは、つぎつぎとベストセラーを書くようになるよりも、彼のような老人になりたいと思ってしまう。そこに今やってる仕事との矛盾がある。そういう対立的な考え方をしてていいことなんてないんだけど、どうすれば統合する方向が見えるのか、そこらへんはずっとわからない。

ほんとねえ、彼の文章を好きだという人が(万一!)いたら、ご一報ください。麻雀博物館副館長の鈴木知志さん(69歳)って人なんですけどね。

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