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2006年7月15日 (土)

【教育】大学入試の終わり

数日前の朝日新聞朝刊の1面トップに、こんな記事が掲載された。

私立大、系列外の中学高校と連携 生徒先取り
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200607120008.html

これは1面トップになっただけあって、かなり衝撃的な記事だった。

今、私立大学が系列の小中高を作る動きが活発化している。たとえば、早稲田が附属小学校を作ったことなどがその例だ。これは、すでに訪れている大学全入を乗り切るため、早い段階から生徒を囲い込んでしまおうということだ。大学入試で多数の生徒を取るのは難しくなるから、中学や高校、場合によっては小学校から生徒を囲い込んでしまう戦略を、どの大学も取ろうとしている。それが現状だった。

しかし、それではもう間に合わないと見た中央大学が、系列の学校を作るのではなく、公立中学から附属高校へ無試験で推薦入学できるように提携するというのが、この日の記事なのである。

これが附属中学や高校だったらおかしくない。一度は試験を課せられている。しかし、その提携を公立中学と結ぶのだ。3年生がわずか15人しかいない中学から10人以上の推薦入学を認めるのだから、これは完全に無試験で中央大学高校から中央大学への進学を認めることになる。文京区の子だったら、中学は自由選択だから誰でもこの第三中学に入ることができ、そうすれば、ほぼそのまま中央大学に行けるのだ。

それをしたのが、いやしくもMARCH(明治・青山・立教・中央・法政)の一画を占める中央なのだ。事態の深刻さが伝わってくる。もうMARCHまで無試験の時代に入りつつある。

このニュースにより、他の大学の動きも活発化するだろう。中央が無試験になったのだ。それよりもランクが下の大学は無試験になるだろうし、それでも、魅力のない大学は中学や高校に提携してもらえないかもしれない。大学が生徒を選ぶ時代は完全に終わりを告げ、生徒が大学を選ぶ時代となった。これから生徒を選べるのは、国公立と早慶クラスだけになる。

似たような動きは、関西では以前から盛んになっていた。関関同立(関西・関学・同志社・立命館)が激しいM&Aを繰り広げており、系列の中高を増やし、系列外の中高とも提携を結んでいる。それだけではない。学部学科を増設し、キャンパスを移転拡張し、近隣大学を統廃合して、大規模化に向かっている。たとえば、聖和大が関西学院大に合併される。こういった大規模化競争は関東では起きていない。

学校もM&Aの時代に入り、これから弱い私立大学は次々と統廃合されてゆく。もちろん私立の中学や高校も同様だ。そんな時代が訪れている以上、じつは中学生や高校生の子どもを塾に通わせる必要など、もはやない。受験が必要となるのは一部の難関大学だけであり、それ以外の大学は、学校でそこそこの成績を取っていれば行けるようになる。

であるにも関わらず、小中学生の通塾率は下がっていないと思われるし、中学受験率はむしろ上がっている。これは、おそらく教育に対するビジョンを立てにくい時代だからだろう。そんな現状を見て、塾関係者はこれからも中学受験率は上がり続けると予想するが、ぼくは疑問だと思っている。

無試験でMARCHに入れる時代なのだ。それならば、早い段階からそれ以上の難関大学を目指そうとするよりも、出口(つまり就職)に備えるほうが有効だという戦略が登場してくるほうが自然に思える。そういう意識の転換がまだ起きていないのは、われわれ保護者の意識が現実に追いついていないからだ。大学入試が選抜として機能する時代は終わったのである。

資本主義的な競争の原理は、拡大の時代には適したシステムだった。基本的には良いものが拡大していった。しかし、縮小市場になると、こういった囲い込みと寡占化を招くことになる。もちろん、ここにも競争原理は働いている。だがそれは、ゆるやかな縮小というよりも消耗戦を感じさせる。このエネルギーが教育の質の向上に結びつけばよいのだが、残念ながら世の中とはそういうものではないようだ。

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